PROBLEM課題
多世代の市民の声を取り入れた新図書館を設計する
善通寺市図書館は、1978年に開館して以降、約40年が経過し、施設や設備の老朽化や図書の蓄積による館内の狭隘化などの問題を抱えていました。そこで2021年、図書館を新庁舎の複合施設としてリニューアルさせる計画を発案しました。新図書館のコンセプトは、「本と出会い、人がつながり、夢をはぐくむ場所」。設計にあたり善通寺市は、多世代の市民の声を広く取り入れられるようなワークショップを実施することで、新図書館を善通寺市に住む多様な人々が集う拠点にしたいという思いを持っていました。
APPROACH実施内容
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小学生からシニアまで、世代を超えて創発を生み出すプロジェクト設計
年齢も背景も異なる人々が参加するワークショップでは、個人的な要望や意見の言い合いに終始してしまう懸念や、年長者や知識のある一人の参加者の意見に全体の考えが引っ張られてしまい、アイデアの多様性が損なわれてしまう危惧がありました。そこで、本プロジェクトでは、全3回のワークショップの参加者の属性を、各回ごとに変えることで、世代間のコラボレーションがスムーズに行われるような設計を施しました。第1回目では、大人を対象としてまず原案となるアイデアを考えていき、第2回目で小・中学生がそれらのアイデアをブラッシュアップしていきます。最後の第3回目では、再び大人を対象に、考えを具体的にまとめていきました。多世代の視点を通して徐々にアイデアを洗練させながら、「善通寺市らしさ」を深掘りし、最終的にどんな図書館にしていきたいかイメージを固め、幅広いアイデアを生み出すことができました。
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参加者自身で問いを設定することによる、主体的を引き出す設計
「蔵書されている本の種類は?」「来場者数向上のための施策は?」など、図書館について考える切り口は無数に存在し、参加者一人ひとり興味・関心を持つ点は異なります。そこで、多世代の市民の方々と行なった第一回目のワークショップでは、新図書館についてどんな切り口から考えていくか、参加者自身で問いを立て、探求するところから始めました。「人とつながる図書館とは?」「現在禁止されていることが、解禁された図書館とは?」などのテーマが挙げられ、積極的に議論が繰り広げられました。
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非日常的な活動からアイデアを展開する
新図書館に対する意見・要望が出されただけで終わらないように、各ワークショップではLEGO®️や未来の地域の広報誌の制作などの非日常的な活動を設け、参加者が楽しく発想を飛ばしながら、主体的に関わるための具体的なアイデアを展開できるよう注力しました。
RESULT結果
新たな地域の拠点に対する深い理解と、ワークショップの様子をまとめた簡易報告書の公開
多世代の視点を交えた探求的活動や遊び心ある創発型のワークを用いることで、未来の善通寺市の拠点となる新図書館について考えていきました。プロジェクト終了後、実施内容および参加者の方々の意見をまとめた簡易報告書がウェブサイト上に公開されるとともに、ワークショップで生まれたいくつかのアイデアが、実際に新図書館の施設計画に反映されました。参加者からは「面白い意見がたくさん出ました。多くの人が集い、人が育つ豊かな街になってほしい」といった未来の善通寺市に向けた思いや、「図書館のコンセプトである『人がつながる』という意味が、ワークショップに参加したことでよくわかりました」といった好意的な感想が多数寄せられ、新図書館のコンセプトに対する理解が深められた様子が伺えました。
POINT ポイント
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1
子どもからシニアまで、それぞれの視点を交差させながら図書館のアイデアを発展させる
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2
遊び心を取り入れたワークで、具体的な図書館での過ごし方を考える