PROBLEM課題
三浦半島の観光客減少、定まらないターゲット像
三浦半島では人口と観光客が年々減少しており、三浦半島の交通インフラや観光施設を幅広く運営する京急電鉄にとって、都市近郊リゾートとしての三浦半島の活性化が急務でした。これまで「みさきまぐろきっぷ」「葉山女子旅きっぷ」など個別のエリアの魅力を訴求する施策はすでに取り組んでいましたが、三浦半島全体の観光の軸となるコンセプトが存在せず、魅力を届けるターゲット像も曖昧な状況でした。依頼主である京急電鉄の三浦半島事業開発部では、社内の議論だけでは視野が狭くなりがちで、より広い視点から三浦の価値を再考したいというニーズを持っていました。
APPROACH実施内容
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異分野人材の混交チームで三浦半島の価値を問い直す
幅広い視点から三浦半島の価値を再考するために、編集者、空想地図作家、デザイナーなど多様な分野で活躍する外部メンバー約10名と、京急グループのメンバー約15名の混交のプロジェクトチームを結成しました。結成したチームメンバーでワークショップとフィールドワークを多数繰り返し、多様な視点を織り交ぜながら観光コンセプトを検討する議論を重ねました。
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ターゲットペルソナの具体化と観光シナリオの作成
三浦半島を訪れる可能性を持った人物像を探るため、性別・家族構成・趣味・使用デバイス・三浦半島を訪れるきっかけなど、様々な観点からターゲットペルソナを検討し、仮設定したペルソナの視点で三浦半島のフィールドワークを行うことでペルソナのブラッシュアップを重ねました。ペルソナの方向性が定まった後には、「ペルソナにとって三浦半島に訪れることはどんな意味があるのか」という観点で、ペルソナにとっての観光経験のシナリオを精緻化しました。
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資源と魅力を編み直した観光コンセプトをブックレットに
ペルソナにとっての三浦半島の魅力をベースにし、三浦半島の観光コンセプトのトップコピーを「“あるがまま”を楽しむ」として、「観光地化されていない都会から近い“秘境”である」など、いくつかの魅力をコンセプトブックにまとめました。コンセプトブックにはペルソナの詳細な情報や、観光シナリオ、京急電鉄としての具体的な施策アイデアなどをまとめ、本誌は京急電鉄の社内ネットワークで配信されました。
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コンセプトを体現した若者向けイベントの開催
コンセプトブック製作後もワークショップを重ね、三浦半島の観光コンセプトを体現したイベントとして「三浦Cocoon」を企画立案しました。従来の「イベント」感にとらわれない自由な発想でアイデアを出し、リサーチを重ねた結果、ペルソナとして設定した20~30代の若者が三浦半島を訪れ、自らのペースで三浦半島を自由に周り、景色を楽しみ、ゆったりとした時間を味わうイベントとなりました。
RESULT結果
都市近郊リゾート三浦としての新たなスタート
三浦半島の魅力を再定義し新たな観光コンセプトを創造するために、ターゲットペルソナを設定し、ペルソナにとっての三浦半島の魅力や過ごし方のシナリオを精緻に作成し、コンセプトブックにまとめあげました。ここで生まれた新たな観光コンセプトを体現するイベントとして企画立案した「三浦Cocoon」は参加チケットが完売し、イベント当日70名を超える参加者が三浦半島を訪れました。来場者アンケートでも、7割以上の参加者がペルソナとして設定していた年代層と同じ20-30代、9割以上の参加者が「三浦にまた来たい」と答える結果となり、都市近郊リゾートとしての三浦半島の魅力を実現していく新たなスタートになりました。今後は更に地元の方々との連携を強化していく予定です。
また、2018年8月7日には、テレビ東京『ガイアの夜明け』の「再発見!新・ニッポンの旅」という回において、本プロジェクトが特集されました。「ペルソナ」を中心としてイベントの企画を練り上げていく過程に注目し、プロジェクトの進行を追っていただきました。
POINT ポイント
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1
ペルソナを起点とし、ペルソナ視点での語りを引き出すワークショップデザイン
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2
異分野人材とのコラボレーションから生まれる多様なアイデアの切り口
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3
クライアントチームの想いや創り手としてのこだわりを引き出すプロジェクト設計