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ワークショップデザイン
ファシリテーション実践ガイド

ワークショップの基本から活用する意義、プログラムデザインやファシリテーションのテクニック、企業や地域の課題解決に導入するためのポイントや注意点について、最新の活用事例と研究知見に基づいて解説します。
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PROJECT DETAIL

生活者の「在りたい未来」のデータから、新たな事業ビジョンを構想する

洗剤、シャンプー、おむつなど日用品の製造・販売を手がける花王株式会社から依頼を受け、部署や事業ドメインの垣根を超えた混交メンバーで、生活者に届けたい事業価値や、未来のビジョンについて構想するプロジェクトを行いました。3回のワークショップを通して、生活者研究センターが調査した子育てをしながら働く女性たちが「どう在りたいのか」に関する物語データを読み解きながら、花王として生活者のどのような暮らしを支えたいのか、どんな世界をつくりたいのかを思い描き、各事業ドメインにおける新商品のアイデアを複数生み出しました。

  • Client

    花王株式会社

  • Period

    4ヶ月

  • Member

    安斎勇樹、小田裕和、坂間菜未乃、森川絢瑛、小林実可子

PROBLEM課題

"正解探し"でも"独りよがり"でもない、生活者起点のビジョンをつくるには?

昨今のイノベーション論において、市場調査から「答え」を探してくる商品開発ではなく、企業側が「主観的なビジョン」を描き、「新たな意味」を提案する姿勢が重視されています。他方で、企業側からの独りよがりの提案では、生活者の価値観や取り巻く文脈から外れすぎてしまい、イノベーションにはつながりません。企業と生活者が未来の望ましいビジョンを共につくっていけるような、市場調査と価値創造の在り方を見つめ直す必要がありました。

APPROACH実施内容

  • パターン・ランゲージを活用した対話型ワークショップで、生活者が「どう在りたいのか」を探る

    自分らしく子育てをしながら働くための工夫をまとめたパターン・ランゲージ『日々の世界のつくりかた』のカードセット(※)を活用した、子育てしながら働く女性を対象とした対話型ワークショップを実施しました。ワークショップの参加者は、パターンのカードを通してこれまでの日々の生活を振り返り、自分の経験や価値観を捉え直すことで、ひとりの人間として「どう在りたいのか」を見つめ直す機会となりました。そこで語られた発言は、仕事や家事に関する個別的かつ近視眼的なニーズではなく、人間像を描き出す未来に向けた変化のエネルギーを持ったデータとして、物語形式で記録をしました。(※花王生活者研究センターと慶應義塾大学井庭崇研究室の共同開発)

  • 生活者データと個人の哲学を往復しながら、新たな事業ビジョンを構想する

    花王の部署や事業ドメインの垣根を超えた混交メンバー約12名を対象に、記録した生活者データを読み解きながら新たな事業ビジョンを構想するための合計3回のワークショップを実施しました。子育てをしながら働く女性たちの「在りたい姿」について理解を深めながらも、参加した花王社員の一人ひとりが「どのように生活者に寄り添いたいか」「どんな価値のギフトを届けたいか」といった商品開発の「哲学」を考え、それらを対話的に共有しながら、企業としての事業ビジョンに昇華させていきました。

RESULT結果

部署の垣根を超えて見つめ直したビジョンから、具体的な商品アイデアを構想

多様なメンバーがワークショップに参加し、部署や事業ドメインの垣根を超えて企業としての事業ビジョンを見つめ直す時間となりました。生活者の現在の個別的ニーズではなく、人間として「どう在りたいのか」に関する物語データを扱うことで、生活者に寄り添いながらも、未だ実現していない未来のビジョンを構想することができました。結果として、各事業ドメインの具体的なブランドビジョンや、実現可能性の高い商品アイデアが複数生まれていました。

POINT ポイント

  • 1

    生活者の在りたい姿を探る対話型ワークショップによる調査データの取得

  • 2

    生活者に寄り添いながらも、作り手としての哲学を内省するための足場かけ

  • 3

    垣根を超えて企業としてのビジョンを構想するための部署混交チームでの実施