PROBLEM課題
デザイナー起点による、ものづくりの土台となるブランド・アイデンティティの浸透
創業以来、革新的なテクノロジーと熟練の技能により数多の製品を世に送り出し続けてきたシチズン時計株式会社は、多様なモデルをデザインする中で、ユーザー目線やトレンドを意識しすぎるあまり、デザイナーが抱える"シチズンらしさ”の輪郭がぼやけてきていることに課題を感じていました。創り手の一人ひとりが、同業他社とは異なる"シチズンらしさ”を感覚的に理解しつつも、具体的にそれらが何であるかを言語化するには至らない中で、創業100周年の節目を迎える今回、これまでの100年間のデザインを振り返り、次の100年に残したいブランド・アイデンティティを定義するインナーブランディングプロジェクトの設計と実施が求められていました。
APPROACH実施内容
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創り手として大事にしたい"シチズンらしさ”を共有するワークショップの実施
創り手主体のボトムアップ型インナーブランディングプロジェクトとして進めていくにあたり、まずは全デザイナーを対象に、それぞれが抱えている"シチズンらしさ”を共有するワークショップを実施しました。ワークショップでは「"シチズンらしい”と思う時計を3つ選んでくる」という事前課題のもと、各自がモデルを選び、そのモデルを選んだ理由が何かを創り手の目線から語り合い、未来に向けて大切にしたいイメージをすり合わせていきました。
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ワークショップと全社アンケートで得られた膨大なデータの解析とマッピング
ワークショップを通じてデザイナー間の"シチズンらしさ”の輪郭が掴めてきた中で、より幅広く意見を収集するため、全社的なアンケート調査を実施しました。一定期間の社内サーベイを通じて得られた膨大な記入データを、ワークショップ内での意見と統合し、テキストマイニングによる共起ネットワークなどの方法で解析。それぞれの発言や記述の共起関係の濃淡を図示しました。
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対話を重ね、デザイン・ソースのカテゴリー化とシチズンを代表する100のモデルを選定
テキストマイニングによる解析結果をもとに、「洗練された技術」など、”シチズンらしさ”の基準となる12のカテゴリーを定めました。その後もプロジェクトメンバーによる対話を重ね、新たに規定されたカテゴリーを基準に、創業から現在まで発表された6000にも及ぶ過去モデルから、シチズンを代表する100のモデルを選定しました。
RESULT結果
ブランド・アイデンティティの核を学び、活用するための図録の編纂
選定した12のカテゴリーと100のモデルは、2018年12月に開催された「CITIZEN “We Celebrate Time” 100周年展」内で展示されたほか、その後制作された図録「CITIZEN DESIGN SOUCE 100」に収録されています。同図録はシチズン社内のクリエーションに関わるすべての人が、これまで伝統的に大事にされてきたデザイン・ソース(秘伝のタレのようなもの)を学び、活用していくことを目的に編纂され、カテゴリー別に並べられた100のモデルの一つひとつを社内のデザイナーが手書きでスケッチし、内包されている”シチズンらしさ”を詳細に解説する内容となっています。
POINT ポイント
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1
デザイナー起点のボトムアップ型アプローチ
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2
テキストマイニングの手法を用いた幅広いデータの収集・解析
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3
対話による”シチズンらしさ”のカテゴリー化と象徴的な100のモデルの選定