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公開講座「ワークショップデザイン・トレーニング 問いをデザインする技法」(イベントレポート)

REPORT
Hikaru Mizunami
2018.01.10
公開講座「ワークショップデザイン・トレーニング 問いをデザインする技法」(イベントレポート)


 

ワークショップデザイン における「問い」

2017年12月16日、東京大学本郷キャンパスにて、「ワークショップデザイン・トレーニング 問いをデザインする技法」が行われました。メインファシリテーターは安斎勇樹、サブファシリテーターは和泉裕之が務めました。
 
今回の講座では、ワークショップデザインの根幹ともいえる「問い」を立てるために必要な能力の鍛え方を学んでいくことを目的としています。そのような実践向きの講座とあって、お集まりいただいた40名の方々も、多様な分野で実際に場を開き活躍されている方々が数多くご参加されていました。
 

 
 

レクチャー&エクササイズ

まずは参加者の創発をうながす問いをつくるうえで重要となる「制約」「構成」という二つのポイントについて、安斎自身による研究をもとにした解説が行われました。
 
たとえば「LEGOでカフェをつくるワークショップ」を行う場合、ただ単に「居心地の良いカフェを作ってください」というお題のもと制作しても、あまり活発な議論は起こりません。一方で、それよりもやや難しい「制約」を加えることで、参加者の創造性を引き出すことができるとされています。先ほどのカフェの例でいうと、「危険だけど居心地の良いカフェを作ってください」といったように、相反する要素を内包したお題を与えるほうがより多様な意見が集まりやすくなります。
 
また「構成」について、たとえ現在抱えている問題の核心をついた問いが思いついたとしても、それを参加者にそのままぶつけるのは逆効果となってしまいます。そのような深い問いをいきなり与えられても、参加者に準備ができていないために、その場しのぎの浅い回答しか出てこないでしょう。そのため、まずは参加者にとって身近で答えやすい問いからスタートすることが重要となります。身近な問いから答えてもらい、そこからより本質的な問いへといくつも問いを順序立てながら進めていくやり方が、深い思考を促すためには有効となります。
 
続いてまずは試作品として指定のワークシートを用いてワークショップで使える問いを構造的につくってもらいました。
 


 
トレーニング前にこのような実戦的な問いづくりを行ってもらった背景には、自分の実力や得意・不得意をまず適切に把握してもらおうという意図がありました。そしてその中で感じた難しさを解消するためのトレーニング法を習得することが本講座のゴールとなります。今回の講座で安斎は、こちらの8つのトレーニング・メニューを用意していました。
 

 
このメニューの一つひとつに解説と演習が用意されており、それらをこなしながら問いを立てる力を身につけていきます。また、通常の筋トレで言うところの腹筋や背筋のように、これらの練習法によって鍛えられる要素も異なります。一例を挙げると、「分解」のメニューでは、お題として与えられた問いの構造を要素分解し、適切なサイズや表現に仕立て直していくトレーニングが行われました。
 

あなたが優れたファシリテーターになるために、これから5年間、毎朝すべきことは何か?
その結果、あなたはどんな未来を作りたいのか?

 
ところで、この問いははたして「答えやすい問い」でしょうか。問いをあらためて見つめ直してみると、「毎朝すべきことは何か?」「どんな未来を作りたいのか?」という大きな問いがふたつも含まれています。また、それ以外にもいくつもの小さな問いが複合的に組み合わさっていることがわかります。
 

 
このような問いに答えようと思うと、様々な角度から検討する必要があり、多くの時間と労力を必要としてしまいます。そのため一般的には「答えにくい問い」であるといえるでしょう。そして参加者がより答えやすく深く思考しやすい問いになるように、できる限りシンプルなかたちに構成し直していく必要があります。今回の講座では、このような大きな問いを小さく答えやすい問いへと分解していく演習が設けられていました。
 
また、「分解」以外のトレーニングについても、事例や最新の知見の紹介から、これからのワークショップデザインに活かせるような演習が次々におこなれていました。
 


 

「問いのデザイン」をめぐる新たな課題

8つのメニュー終えたのち、本日の講座の総まとめとして、講座の最初に作った自作のワークショップをリデザインしてもらいました。今日の演習で培った能力を活かしながら、より深く質の高い学びを促すにはどのような問いが適切なのか、さまざまな要素から再検討していきます。ここまで5時間を超える長丁場でしたが、一切集中を切らさずにひたむきに問いづくりに向き合い、前のめりになって意見交換をする参加者の方々の姿が印象的でした。
 


 
最後に安斎は、今回紹介したトレーニング法をさらに発展させたかたちとして、このように話していました。

 

(今回の8つのメニューに関して)腹筋するのは好きだけどバランスボールはちょっと…という人がいるのと同じく、この8つの中にも得意・不得意や好き・嫌いというのがあると思います。だから、全部完璧にできる必要はなく、協働的に誰かとともに問いをつくるというのも非常に有効でしょう。自分とは決定的に違う視座の置き方や考え方に触れることができるため、とても勉強になると思います。

 
しかし一方で、今回具体的なエクササイズを充実させたことによって、問いのデザイン論における新たな課題も見えてきたと言います。

 

今回のエクササイズで扱ったケーススタディは、いずれもあるテーマでワークショップを実施することが決まった前提で、そのワークショップにおける個別のワークの問いを検討するものでした。しかし現実では、「半年後までに新しい商品を生み出さないといけない」「地域に観光客が来ない」といった大きな問題に対して、「そもそも、この問題を解決するために、ワークショップを採用すべきなのだろうか」「ワークショップを採用するとして、どのようなテーマで、何回の実践が必要だろうか」などと、プロジェクトスケールで問うための視座も必要なんですよね。個別のワークの問いのデザインの前段階にあたる、いわば上流過程としての問いのデザイン力も、今後の講座の射程に含められるよう、プログラムをアップデートしていきたいと感じましたね。

 
そのような課題意識をもとに、「問いのデザイン・トレーニング」はさらなる改善をしながら続けられていきます。これからどのような発展を見せるのでしょうか。
 

 

▼グラフィックレコーディング!

講座中、ミミクリデザインの田中真里奈によるグラフィックレコーディングも行われていました。ワークショップの記録や進行の可視化だけでなく、参加者同士の交流のきっかけにもなっていました。

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