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ワークショップで獲得される身体知 vol.0 はしがき

ESSAY
Hikaru Mizunami
2018.01.02
ワークショップで獲得される身体知 vol.0 はしがき



ワークショップでは多くの場合、“そのワークショップを通じて学んでほしいこと“が作り手によって設定されています。そして、「ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ」ではそれを「学習目標」と呼んでいます。



参加者に何を学習してもらいたいのかというのは、すなわち作り手がどんな意図や願いを持ってそのワークショップを実施しているのかという点と密接に関わってきます。そのため、学習目標の決定はワークショップデザインにおいて中核をなすポイントと言えます。特に教育の一環として行われるワークショップの場合、この学習目標をより丹念に作り込むことが重要となるでしょう(もちろんあまりにもその意図を押し付けすぎてしまうと参加者の創造性が阻害されてしまうので注意が必要ではあるのですが)。



そうした学習目標の重要性はもはや解説するまでもないと思います。しかし、それらはあくまで「一回のワークショップの中で学習してほしいもの・こと」でしかありません。そして個人的な感覚として、そうした短期的に学習可能な能力がある一方で、「ワークショップやそれに類似した活動をし続けることで、長期的に獲得している能力もあるのではないか」というような気がしています。



例えば、2011年に文科省の「コミュニケーション教育推進会議」が公表しているデータでは、「21世紀を生きる子どもたちは、積極的な『開かれた個』(自己を確立しつつ、他者を受容し、多様な価値観を持つ人々と共に思考し、協力・協働しながら課題を解決し、新たな価値を生み出しながら社会に貢献することができる個人)であることが求められる」とした上で、その解決の手段として、ワークショップ型の授業を継続的に実施し、「コミュニケーション能力」を育んでいくことが挙げられています。



しかし、日常に活きるようなコミュニケーション能力を一回のワークショップの中で身につけようとしても、おそらくむりがあるでしょう。「コミュニケーション能力を身につける」というのは、どちらかというと、「お手本をくり返し模写するうちに綺麗な字が日常的に書けるようになる」や「長期間のデスクワークによってタイピングが早くなる」などと同じく、継続的な訓練のうちに身体が覚えた技術、すなわち「身体知」に近いもののように思えます。実際、この文科省のデータにおいても、こうした活動を中・長期的にくり返し実施していくことの重要性が主張されています。



そして長期にわたってワークショップに関わることで獲得される身体知は、おそらくコミュニケーション能力だけではないでしょう。今回のシリーズでは、そうした「ワークショップに繰り返し関係することで身につく可能性がある身体知」を経験をもとに仮説として提唱することを目的としています。論文ではないので、検証することはありません。あくまで可能性として示すだけ。無責任かもしれませんが、可能性として示すことで、読んだ人が「あるある」と共感したり、「そうかも」と納得してもらうだけでも、ワークショップという活動の可能性を広げていく一助になるのではないか、と思っています。



初回のキーワードは「曖昧さ耐性」としました。ワークショップにくり返し参画することで、知らず曖昧さ耐性という身体知が獲得されているのではないか、という仮説を提唱しています。興味があればぜひご一読ください。



○次の記事:ワークショップで獲得される身体知 vol.1 曖昧さ耐性




参考文献

ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ
山内祐平 森玲奈 安斎勇樹(慶應義塾大学出版会, 2013)

子どもたちのコミュニケーション能力を育むために-「話し合う・創る・表現する」ワークショップへの取組
文部科学省 コミュニケーション教育推進会議(2011)

身体知研究の潮流- 身体の解明に向けて
古川康一ほか(人工知能学会論文誌,2005)

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