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ミミクリの本棚 vol.1 「未来の学び」をデザインする -空間・活動・共同体

ESSAY
Hikaru Mizunami
2017.12.24
ミミクリの本棚 vol.1 「未来の学び」をデザインする -空間・活動・共同体

 

◎今日の1冊:「未来の学び」をデザインする-空間・活動・共同体

美馬のゆり 山内祐平 (東京大学出版会,2005)

「ミミクリの本棚」、はじめます。

今日、さまざまな場所で、さまざまな形式のワークショップが行われています。そうした多様性もワークショップの魅力ではあるものの、それぞれのやり方や考え方が実践ごとに大きく異なるために、結果としてワークショップという活動の全体像や本質をつかみづらくなっているとも言われています。「いろんなかたちがあるけど、結局ワークショップってなんなの?」という問いについて、明確な答えを持つことが難しくなってきているといえるでしょう。

 

そうした状況のなかで、各領域でワークショップやそれに近い活動を行うプロフェッショナルたちは、自分たちの活動をどう捉えて日々実践しているのでしょうか。今回の新シリーズ「ミミクリの本棚」では、「本」というメディアを切り口にそれぞれの専門家の視座や信念を知り、紡ぎ合わせていくことで、「ワークショップとは何か?」という問いに対して、自分なりの答えを持つに至るまでの手助けができればと考えています。

 

「学びをデザインする」とはどういうことか。

 

初回となる今回の一冊は「『未来の学び』をデザインする-空間・活動・共同体」。この本は「学習環境デザイン」という概念をベースとして書かれています。先日行われた安斎による講座「学習環境デザイン入門」でも解説されていたように、この学習環境デザインにおける諸理論がワークショップにおける学びの価値を保証しています。

 

また、著者のひとりである山内祐平さんは、弊社代表・安斎が大学院時代に直接教えを受けた、いわば安斎の「師匠」にあたる人物でもあります。しかしながら難しい専門用語は決して使われず、驚くほどスラスラと読めてしまうのも、この本の大きな魅力のひとつでしょう。

 

ところで、この本のタイトルの一部にもなっている「デザイン」という言葉。よく見かける言葉ではありますが、その意味を正確に掴んでいる人は少ないのではないでしょうか。「『未来の学び』をデザインする-空間・活動・共同体」では、この「デザイン」という言葉についてこのように述べられています。

 

「デザインする」という活動には、必ずそこに目的があり、対象となる人がいます。デザインは人が媒介する活動であり、誰がやっても同じようにできる解の算出をめざす工学とは異質な要因を持っています。しかし、同時に芸術ほど属人的ではなく、一定の方法論は共有できる活動でもあります。

私たちは、デザインという営みが持っているこのような特徴に注目し、新しい学習環境を構築するときの中心になる概念として、デザインという言葉を使っています。そこでは目的、対象、要因、そこへ至るまでのプロセスなどを意識した活動という意味が込められています。(p.192)

 

「デザイン」という言葉が使われる時、その背景には必ず目的が存在します。そしてこの本では、実際の先進的な建築物やプロジェクトをいくつも紹介しながら、学習者がより学べるようにデザインされた場の事例や、そのデザインが目的とする「学び」が一体どんな学びなのか、詳しく記述されています。

 

視点が変われば見え方も変わる。

 

この本は「空間」「活動」「共同体」という3つの章によって構成されています。そしてそれらは同時に学習環境デザインにおいて、環境を捉えるための枠組みとしても用いられています。

「空間」「活動」「共同体」の各章ではそれぞれの要素について事例をもとに詳しく記述されています。しかし、このたび本稿を書くにあたってこの本を改めて読み返してみると、「空間」の章で紹介された工夫が実は「共同体」を形成する上でも重要であるなど、各要素が密接に関わりあっていることがわかります。そのように事例ひとつとっても、その事例をどの要素から検討するかによって印象が変わることから、再読するのが楽しくなるような一冊だと感じました。

 

そしてそれは今私たちを取り巻くこの「環境」についても同じことが言えるでしょう。私たちの周りの環境も、「空間」「活動」「共同体」のうちどの観点から見つめるかによって、見え方が大きく異なります。この本をひとつのヒントとして、そのような多角的なものの見方を楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

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