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公開講座「ワークショップ・ファシリテーション入門【初級】」(イベントレポート)

REPORT
Hikaru Mizunami
2018.07.09
公開講座「ワークショップ・ファシリテーション入門【初級】」(イベントレポート)


 
ワークショップを成功させる上で気をつけるべきポイントは多数ありますが、その中でも特に重要なテーマの1つとして「ファシリテーション」が挙げられます。
 
ワークショップが様々な領域で活用される現在、ファシリテーションのあり方も多様化しています。ファシリテーターとして、どのように関わり方をすれば参加者に学びを促していけるのか、また、どうすればファシリテーションが上達するのか…。悩みが尽きることはありません。
 
そのような背景のもと、2018年6月30日、東京大学福武ホールにて、公開講座「ワークショップ・ファシリテーション入門【初級】」が開催されました。ミミクリデザイン代表の安斎勇樹がメインファシリテーターを、和泉・東南がサブファシリテーターを務めた今回の講座では、「ファシリテーションの基本的なポイント・考え方を理解する」「基礎的筋力を鍛える」の2点を目的としていました。
 
今回の講座は、以下の5つのポイントを一つずつ解説していくかたちで、進行していきました。
 

・自分のファシリテーターの芸風を知る
・ワークショップの構造と本質を理解する
・ファシリテーションの難しさの実態を知る
・ファシリテーションの筋力(インナーマッスル)を鍛える
・とにかく“バッターボックス”に立つ

(本レポートでは太字の3項目について主に解説していきます)

 
 

良い/悪いファシリテーターの特徴とは?

そもそも良いファシリテーション、あるいは悪いファシリテーションはどのように判別できるのでしょうか。その客観的な基準をあぶり出すべく「良い/上手なファシリテーション」と「悪い/下手なファシリテーション」の特徴をそれぞれ付箋紙で書き出していくワークから、本日の講座はスタートしました。

良い/悪いファシリテーションの基準として、「一面的ではなく、参加者に合わせた振る舞いができているかどうか」「参加者が自ら答えを出すまで待ち続けることができるかどうか」などのポイントが挙がっていました。また、ある参加者から提示された「参加者としては、ファシリテーターが誘導したい方向性がわかってしまうとやる気が失せてしまうが、ファシリテーターとしては、事前の想定通りにプログラムを進ませたい気持ちもわかる。その折り合いをどうつけていけば良いのか難しい」といった疑問を発端として、全体でディスカッションが行われる一幕もありました。



 
 

ワークショップ・ファシリテーション とは何か?

ファシリテーションは、広義の意味では「集団のコミュニケーション・学び・創発を促すこと」とされています。また今回の講座ではあくまで学べる対象を「ワークショップのファシリテーション」に絞った上で、安斎はその定義について、「『事前に設計したプログラムに沿って司会進行しながらも、当日の状況に応じて指示を変更したり、参加者や問いかけや助言をしたりする、一連の働きかけ』を指す」と冒頭で示していました。


 
 

自分のファシリテーターの芸風を知る(レクチャー①)

ファシリテーションの定義を再確認したあとは、より実践的な話に。一口にファシリテーターと言っても様々な“芸風”がある、と安斎は言います。そして、自身がこれまで学んできた様々なエキスパート・ファシリテーターたちの特徴を引き合いに出しながら、自分がどういうファシリテートが得意で、今後どのようなタイプのファシリテーターを目指していくべきなのかを見極めることがまず大事なのだそう。

自分のファシリテーターとしての型を見定めることができたのであれば、その型を実践に活かしていく工夫が必要となります。そこで安斎が次のステップとして示したのは、自分のファシリテーション・タイプに適したプログラムを構成する力を身につけること。
 
自分に向いているプログラムをデザインしていくためには、当然ワークショップデザインに対する深い理解が不可欠です。そこで次のフェーズでは、「ワークショップの構造と本質を理解する」というテーマで、ワークショップのデザイン技法について講義が行われました。
 
 

ワークショップの構造と本質を理解する(レクチャー②)

安斎はまずワークショップの定義を「普段とは異なるものの見方から発想するコラボレーションによる学びと創造の方法」と示した上で、それらを4つのエッセンスに分解し、一つずつ詳細に説明していきました。
 

非日常性:いつもとちょっと違うやり方で、遊びごころをもって取り組む
 協同性:一人の天才に頼るのではなく、多様な集団のコラボレーションを重視
 民主性:関係者/参加者の意見を大事にする。トップダウン→ボトムアップ
 実験性:試しにやってみるという姿勢。“答え”や“設計図”がない

 
この4要素のうちどれを重視するかにより、ワークショップの特性は大きく変化するとされています。逆に言えば、これらの要素を意識しながらプログラムやファシリテーターとしての振る舞い方を即興的に変えていくことで、目の前の参加者に合った場を適宜作り出していくことも可能となります。
 

プログラムデザインもファシリテーションも、場の目的に応じてプロセスをデザインしているという点では共通していると安斎は言います。すなわち、最初に定めた目的が達成されるように、上記の4要素の濃淡を意識しながら、ファシリテーションやプログラム構成をデザインしていくことが、熟達していく上で重要なポイントと言えるでしょう。
 
 

ファシリテーションの筋力を鍛える(エクササイズ①)

ここまでで講義は一旦終了。続いて、参加者の実践力が身につくエクササイズへと移っていきました。今回の講座では、場の満足度をあげるようなテクニックではなく、どんな分野の実践であっても共通して必要となるファシリテーターとしての「筋力」をアップさせることに主眼を置いたトレーニング・メニューを用意した、と安斎は言います。
 
腕の筋肉と足の筋肉で求められる役割が異なるのと同様に、ファシリテーターの筋力にも様々な種類があるのだそう。そして今回は「即興力」と「多視点解釈力」の二つの地力が鍛えられるエクササイズが用意されていました。
 



 
 

講座を振り返って

最後に、ファシリテーションに関する疑問・質問に安斎が回答する質疑応答の時間が設けられていました。
 

 

参加者 自分ひとりででファシリテーターとしての能力を鍛えられるようなトレーニング方法があれば、紹介していただきたいです。
 
安斎 色々あると思いますが、取り組みやすいものから回答すると、自分のファシリテーションの様子を録音するのが効果が高いと思います。また、自分の発言だけでなく、場の全体の発言を録音するのも有効です。ファシリテーションの最中は、必死に試行錯誤しながら問いかけたりして、没入してしまっていることが多いので、自分がどんな振る舞いをしているのか、思い出せないんですよね。
 
録音して聞き直してみると、参加者の発言を誤解していることに気づかされたりする場合が結構あります。そこで「この人、実はこういうこと言いたかったんだな」と気が付いて、「こう汲み取って、こう組み立てていけば、こんなふうにできたかもしれなかったな」と、考えていく。そうすることで、一人でもかなり深い振り返りをすることができます。
 
また、グループの音声の録音してみてもたくさんの気づきが得られますよ。ワークショップのグループごとにどんな発言があったのかを記録する。聞き直してみて「こんなことが隠れて起きてたのか」とショックを受けることもあります。
 
「今回は少ないグループ数だからちゃんと見えてるだろう」と思っていても、全然見えてなかったりすることもありますし、正確な記録をとって振り返るのは、ファシリテーターとしての目の良さを鍛える上で、すごく重要だと思います。


 
他にも「ファシリテーターが成長するための“修羅場経験”を、部下にどのように経験させたらいいか?」という質問に対して、安斎や和泉、東南が過去の実体験に基づいて回答するなどのやりとりがされていました。
 
冒頭にも記したように、実践領域の幅が広がるにつれて、ファシリテーションのあり方も多様化してきています。しかしながら、それらの実践例を丹念に集め、精査していくことで、どの実践にも共通して重要となる必須能力や、どのような課題に対してどんなファシリテーションが有効かなど、より実際的な知見も明らかになりつつあるのではないか、と感じています。そのため、自らの実践領域に閉じこもるのではなく、様々な領域のファシリテーターに触れ、相対化していく姿勢が重要であるという点で、非常に意義深い講座になったのではないでしょうか。

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