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公開講座「ワークショップデザイン・トレーニング【中級】-遊びを活かした場づくり」(イベントレポート)

REPORT
Nana Matsuo
2018.06.08
公開講座「ワークショップデザイン・トレーニング【中級】-遊びを活かした場づくり」(イベントレポート)

こんにちは。ミミクリデザインの松尾奈奈です。

昨今、ワークショップは地域活性化、大学の授業、企業の研修など、従来よりも様々な活動内で取り入れられるようになり、その実践の機会は着実に増えています。上記の例のようにワークショップは様々な目的に適応できる汎用性をもつ一方、そのデザインプロセスは複雑であり、ワークショップの実践経験のある方々なら、その難しさに頭を抱えたこともあるのではないでしょうか。

 

そこで今回はワークショップ実践をより深めていきたい約40名の方々向けに、2018年4月21日、東京大学本郷キャンパス福武ホールにて公開講座「ワークショップデザイン・トレーニング【中級】 -遊びを活かした場作り」を開催しました。ファシリテーターは安斎勇樹が務めました。

 

 

ワークショップデザインには「ひねりのある問いを設定する」と、「活動に遊びの要素を取り入れる」という2つの重要なポイントがあるとされています。「問い」に関しては昨年12月に「ワークショップデザイン・トレーニング -問いをデザインする技法」という講座を行いました。(過去のレポートはこちらから

 

 

今回は「遊び」を活かしたワークショップデザインについて解説し、遊びを学びの場作りに活かすための“眼と筋力”を鍛えることを目的としています。参加者の中にはまさに、「ワークショップの中で“遊び”から“学び”への橋渡しをどのように行なったら良いのか悩んでいる」という方もいました。

 

 

遊びとは何か

「ホモ・ルーデンス」著者のホイジンガによると、遊びとは日常生活とは別の、定められた時間・空間の中で自主的なルールに沿って行われるものであり、人間はその中で緊張と不安定さを解決しながら喜びを感じるとされています。さらにこうした遊びは、人間に創造と学習をもたらすと彼は提唱しています。また、フランスの思想家ロジェ・カイヨワは、遊びを「アゴン」「アレア」「イリンクス」「ミミクリ」の4類型に分類しました。

 

 

ワークショップにおける遊びは、「ミミクリ遊び」が最も取り入れやすく、一方ゲームにおける遊びは「アゴン」や「アレア」が取り入れやすいなど、その遊びの持つ特徴によってその遊びの良さを活かせる活動が変わってきます。

 

 

遊びを学びへと活かす

次に、「遊びを分解する」、「遊びを編集する」、「遊びを想像する」、「見立てる力を磨く」、「コンセプトを埋める」の5つのトレーニングを行いました。その中でも今回は「見立てる力を磨く」「コンセプトを埋める」の2つのトレーニングについてレポートしていきます。

 

 

見立てる力を磨く

ワークショップをはじめとした非日常的な遊びを活かした学びの場をデザインするためには、起こしたい「学び」を「遊び」に「見立てる力」が必要となります。

例えば、以下の解をAにもBにも関係しているものとして見ようとした時に、

このように、どちらにも共通した解を見つけることもできますが、

上図のように、「A・Bと解はそれぞれ別の意味で共通している」というような見方もできます。そしてこうした“見立て”が学びの場のデザインにおいては重要なのです。

このように、A、Bそれぞれの特徴・構造・意味など関連するものを検討し、AでもありBでもある解を見つけるためには、物事をさまざまな角度から捉えて置き換えたり、結びつけることが必要になります。

 

こちらのワークは実際に参加者のみなさんも挑戦しました。

上記のワークシートを参考に、2-3人のユニットごとに福武ホールの内外を探索し、解答となる「写真」の撮影を行い、その後各グループで共有を行いました。

 

 

 

 

このワークでは、「ドアノブ」と「札束」がそれぞれ「どのような使い方ができるのか」、「どのような場所に存在するのか」などを考えることによってそれぞれがどのような“意味”を持つのかを探索していきます。そうすることにより見えてきたそれぞれの要素を解と掛け合わせることでユニークな解を導く練習をしています。

 

このように見立てる力を磨く訳ですが、では、このワークにはどのような目的があるのでしょうか。仮に、「ドアノブ」を「遊び」、「札束」を「学習」に置き換えてみましょう。この場合、「起こしたい学び」の要素を分析し抽出した上で、その要素を内包するような遊びを構想していくことで、非日常的で面白いワークショップがデザインできるのです。

 

 

コンセプトを埋める

ここまでのワークで“遊びと学びの関係”が明確化してきたところで、さらに遊びを活かした学びが充実したものとなるために、コンセプトデザインのワークを行いました。コンセプトとは、「どんな遊びで、何を学ぶのか」をまとめることです。例えば過去に安斎が行なった“Mimic Comic Workshop”では、「特定ジャンルの実写漫画をつくる」遊戯によって「漫画のメディア特性を考える」という学習が起こることを狙いとしていました。

 

 

ここでの「漫画のメディア特性を考える」という学びを引き起こすためには、何も自分たちで漫画をつくらなくても、例えば実存する漫画を読んでそのメディア特性を考えるなど他にもやり方はあるでしょう。しかし、そこに“面白さ”を引き出すためには、「学習と遊戯をひねって結ぶこと」が鍵となります。そうした時に、まさにA(遊戯)とB(学習)の間の解(ワークショップ)にどのようなものが入るのかを、見立てを使って考えることが重要なのです。

 

そこで次に、「コンセプトを埋める」ワークを行いました。練習問題として「『動物の気持ちを理解する』学習を行うために、どのような遊戯が考えられるか?」などの3つの問題に挑戦し、各グループごとにアイデアを出し、それらを共有しました。こうした問いにはもちろん答えはないのですが、みなさんユニークなアイデアをそれぞれ考えられていました。

 

 

こうしたプロセスを通してコンセプトを練り上げたのち、より深く学べるような学習をデザインしていくのです。面白いワークショップのデザインがいかに高度な設計を必要としているのかがよくわかります。

 

 

まとめ

最後に、練習問題へのフィードバックと兼ねて、安斎は遊びと活動の関係についてこのようにまとめていました。

 

どういう学びを深めたいのかによって、参加者に与える課題を変えたり、逆に遊びのルールを変えることによって参加者の学びを変えることができます。なので、みんなが面白いと思う“活動だけ”を参加者に与えても、そこから深い学びが起こるわけではなく、どんな活動に対してもそのデザインが肝になってくるのです。

また、コンセプトを考える際には、学習目標を眺めてばかりいてもなかなか良い活動は起こりません。これはさっきの見立てのエクササイズでもそうなのですが、(先ほどの例でいうと)「動物の気持ちを理解する」とはどういうことなのかということをもう少し構造的に読み解いていく。違う言葉に置き換えると何をすることなんだろう、どのようなコミュニケーションを取ることなんだろう、と分析的に掘り下げていくことが必要です。また、1回のワークショップで動物の気持ちを全て理解することはできないので、何を学んで欲しいのかを焦点化することも大事だと思います。

 

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