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多様なメンバーの力を引き出すファシリテーションのあり方|ミミクリの本棚 vol.3『 かかわり方のまなび方 』

ESSAY
Hikaru Mizunami
2018.05.03
多様なメンバーの力を引き出すファシリテーションのあり方|ミミクリの本棚 vol.3『 かかわり方のまなび方 』

人の力をうまく引き出すひとたちには、以前から関心があった。オーケストラの指揮者にも、大工の棟梁にも。ともに働く人たちに達成感や成長感覚を与えることの出来る存在に、強い憧れがあった。

p37, 「“働き方”と“かかわり方”」より

こんにちは、ミミクリデザインの水波です。
ワークショップデザインを学ぶ上でおすすめの書籍を紹介する「ミミクリの本棚」シリーズ。第3回となる今回は、西村佳哲さんの著作かかわり方のまなび方 -ワークショップとファシリテーションの現場からをご紹介します。
 
 

「かかわり方」を探求する。

「多様なメンバーの力を引き出しつづけていくために、何ができるのか?」
ワークショップのファシリテーターとして活動している人はもちろんのこと、組織においてマネージャー的なポジションにいる人であれば、この問いについて一度は頭を悩ませたことがあるのではないでしょうか。
 
「かかわり方のまなび方」の著者・西村佳哲さんもまた、ファシリテーションという言葉を知る以前から、プロジェクトを主導する者としてこの問題に直面し、悩んでいたそうです。そして「かかわり方のまなび方」では、そんな西村さんがファシリテーションという職能に出会い、すでにファシリテーターとして活躍する数多の実践者たちとのインタビューを通じてファシリテーターとしてのあり方について考えを深めていく様子が、以下のようなやりとりのもと、鮮やかな筆致で記述されています(太字は水波による)。
 
 

関口 ファシリテーターは、何も知らないような人でもいいと私は思うの。どう導いてゆこうとか、持っていこうとか、そういう落としどころを知っていたら「教えちゃう」でしょ。一緒になって、感応上手がいいね。
 
ーー「教えなくていい」と思っている?
 
関口 教えなくっていい。学ぶ主体はあっちだし。
私のテーマは「子どもとどういるか」です。後出しジャンケンで、しかも負けちゃうような、そんなあり方が子どもといる時は大事なんです。気持ちよくちゃんと負けるには、相手をよく見ていなければならない。それは決して簡単なことじゃないけどね。

p110-111, 「関口怜子さんに子どもと過ごすことについてきく」より

 

ーー野村さんにとって、どういうのが面白くて、どういうのが面白くないんですか?
 
野村 可能性が広がるか、広がらないかです。何かを始める時に、出発点から到達できそうな場所がいくつか見えているとしますよね。
すでに見えている場所へ行くのは面白くないです。90分あれば誰でもそこに到達できる、と最初からわかっていたところにしか行けないのは、大変面白くない。出発点からまったく見えていないところへ行くのが面白い。(中略)
 
ある人には見えないものが他の人には見えるかもしれない。誰かが抜け道を見つけるかもしれないし、他の人が持っていない知恵を働かせるかもしれない。せっかく自分以外の人たちと一緒に時間を過ごしているのに、そこに行かないのはもったいない。

p129, 「野村誠さんに一緒に遊び・つくることについてきく」より

 

「ワークショップの主役は参加者です」とか「ファシリテーターは無色透明な存在であるべき」といった話をしたり顔で口にする人が時々いるが、本当にそうだろうか?
 
関口さんは「子どもとどういるか」が自分のテーマだと語ってくれた。野村さんは半ば遊び友達のように皆とかかわっている。そして、場がより手応えのある面白い状態になるなら、自分の特殊能力も遠慮無く発揮する。彼らはファシリテーターが一人で引っ張るわけでも、参加者に預けきるわけでもなく「一緒に」場をつくってゆくようなかかわり方をしている。

p132, 「ワークショップの主役は?」より

 
 

探求し続けるファシリテーターであるために。

西村さんのインタビューによって浮き彫りとなるかかわり方は、まさしく千差万別。実践者ごとに異なっていました。西村さんはその一つひとつを吟味し、自分の考えも合わせて述懐しながら、ファシリテーションという活動のあり方について、理解を深めていきます。
 
全編を通して、参加者にとってより良いファシリテーションのあり方について、安易に結論づけることなく、どこまでも愚直に問い続ける学び手としての西村さんの姿勢が印象的でした。特に前半部は、貪欲に学ぼうとする西村さんと、誠実に相対する実践者の方との交流がある種の会話劇のように展開されていて、ページをめくりながら、まるで作中に描かれた当時の西村さんと一緒に学んでいくような感覚がありました。
 
ワークショップの場は流動的で、不確実性に満ちています。そして、それこそがワークショップの面白さでもあり、難しさでもあります。経験を積むうちに、慣れたやり方やスタイルが確立されていくのは悪いことではありません。しかし、あまりにもひとつのやり方に固執してしまうと、想定外の事態に遭遇した際に、参加者に対して不適切なかかわり方を押し付けてしまうことにも繋がりかねません。
 
逆説的な言い方ではありますが、ファシリテーターとして完成せず、探求し続けることが、良いファシリテーターの条件のひとつと言えるのかもしれない、とこの本における西村さんの姿を見て、考えさせられました。そして、そのようなファシリテーターであるためには、西村さんのように、多くの他者のあり方に触れ、自分のあり方を問い直しながら、常にアップデートしていこうとする姿勢が重要なのではないでしょうか。
 
 

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