TOPへ

BLOG

公開講座「課題解決のための グラフィックレコーディング 入門-議論を可視化し、揺さぶるファシリテーションの手法を学ぶ」【イベントレポート】

REPORT
Hikaru Mizunami
2018.04.17
公開講座「課題解決のための グラフィックレコーディング 入門-議論を可視化し、揺さぶるファシリテーションの手法を学ぶ」【イベントレポート】


 

グラフィックレコーディング が場を活性化する

 
話し合いの場を活性化させるための手法として、グラフィックレコーディング(通称グラレコ)が急速に注目を集めています。議論や対話のプロセスを構造化し、ビジュアルとしてリアルタイムで描き出すグラフィックレコーディングは、場に新鮮なフィードバックをもたらす存在として、参加者の発話や学びを促進させるとされています。ミミクリデザインでも、過去に実施した講座やワークショップのほとんど全てにおいて、グラフィックレコーディングを取り入れてきました。
 
▼1/20開催の公開講座「対話型ワークショップデザイン入門-深まるワールドカフェの作り方」より

 
そして、2018年2月10日に満を持して開催したのが、公開講座「課題解決のためのグラフィックレコーディング入門-議論を可視化し、揺さぶるファシリテーションの手法を学ぶ」でした。ゲストに「Grapic Recorder-議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書」の著者である清水淳子さん(Tokyo Graphic Recorder)を迎えた本講座は、講義と演習を通してグラフィックレコーディングの方法を習得することを目的としていました。会場の東京大学本郷キャンパス福武ホールには、約70名の方にご参加いただきました。
 
グラフィックレコーディングが、場にとって効果的に作用する代表的な理由について、清水さんは、「ひと目でパッとわかる一覧性がある」ことと「物事の関係性を構造化できる」ことをあげていました。
 
まずは事例紹介として、清水さん自身がこれまで所属してきた組織や関わってきたイベントの中で、どのようにグラフィックレコーディングを活用してきたか、丁寧に語れられていきました。
 

とはいえ、今回の講座の目的はあくまで「グラレコを身につける」こと。そして話を聞いているだけで描けるようになるほど、グラレコは甘いものではありません。ここからは実際に手を動かして、描くためのスキルを習得していきます。
 
 

演習 その1:人物を描く

グラフィックレコーディングをしっかりと描くための心構えとして、「聞いた瞬間に描くべき要点を掴みとること」「なるべく少ない線で素早く完成させること」が大切だと清水さんは言います。
 
 

“ 時間をたっぷりかけてまとめれば、当然良いものはできるんですけど、議論をリアルタイムで描くには、どうしても使える時間は短くなるので。聞いた瞬間に、どれだけ要点を掴み取れるかが大事になってきます。また、綺麗に、丁寧に描いていくことよりも、まず話についていくことの方が重要です。なるべく少ない線で描くことを意識した方がいいと思います。”

 
 
まずは「人」の描き方から、演習は始まりました。「タテ縞の膝丈のワンピース服を着たボブカットの女の子を20秒で描く」「アルファベットの”A”をモチーフに、様々なシルエットや体勢の人物を描く」といった課題が次々に与えられていきます。参加者も限られた時間のなかで、どうすれば早く伝わるように描けるのか、試行錯誤を繰り返しながら描いていきます。
 

 
 

“ 私は似顔絵に関しては、本人そっくりに似せなくてもいいと思っています。短時間で描き込むのが大変というのもあるんですけど、似顔絵って誰かの特徴を誇張して描くことでもあるので、本人にとって不本意な絵になりうる危険もある。なので顔はシンプルでみんな同じでもいい。その代わり髪型やアクセサリー、または服の柄などで違いを出してます。“

 
 

「顔」の描き方について、このように話す清水さん。その後、”人物編”の集大成として、「3分間で、この部屋にいる人をなるべく多く、でも見分けがつくように描いてみよう」という課題が与えられました。
 

 
参加者の方々もなかなか苦労している様子でしたが、終了後にお互い描いたものを見比べながら、自分なりに工夫した点や難しかった点を楽しそうに話している姿が印象的でした。最終的に10人以上描けたという方が何人もいて、早くも練習の成果が現れはじめているようでした。
 

 
 

演習 その2:関係性やデータを描く

次のステップでは、人物だけではなく、人物同士の関係性や状況も合わせて描けるようになることを目指していきます。そしてそのための演習として、「文章をビジュアルに”翻訳”する」という課題が与えられました。ほんの一例ではありますが、お題と清水さんによる解答例をいくつかご紹介します。
 
 

“私は妹にプレゼントを送りたい”

 
 

    この文をグラフィックに”翻訳”すると…▽

 
 

“私のスマートフォンの中のデータは音楽が3割、映像が5割だが、普段の生活の中で音楽を聴いている時間が9割”

 
 

    この文をグラフィックに”翻訳”すると…▽

 
 

“私は会社と家の間にあるコーヒーショップにて、妹にプレゼントを渡す予定だ”

 
 

    この文をグラフィックに”翻訳”すると…▽


 
 
関係性をビジュアル化する際には、色の使い方がポイントになる、と清水さんは言います。大胆かつ一定のルールに基づいて塗られていることで、遠目から見ても大事な箇所がどこかわかる上に、雑多な要素が統一されて見えるため、瞬間的な理解が促されるのだそうです。
 

 
また最後に発展的なテクニックとして、例え話をグラフィックで描く演習が行われました。ここでのコツは、とにかく激しく分かりやすく演出すること。例えば、
 
 

“出る杭は打たれる!出過ぎれば打たれない”

 
 
という文章を清水さんがグラフィック化すると、このようになります。
 
 

 
文章だとどこか説教くさい感じになってしまう言葉でも、大胆にグラフィック化することで、コミカルな雰囲気が増し、眺めているだけで楽しい気持ちになります。「正確さをさほど求められない場面では、想像力を最大限に発揮して、やり過ぎなほど激しく描くくらいが丁度良いんですよね。その方が見る人の記憶に残って、対話のきっかけになったりします」と、清水さんは解説していました。
 

 
 

グラレコ上達の4つのステップ&本日のまとめ

続いて、グラフィックレコーディングのスキルを着実に上達させていくための4つのステップが紹介されていました。
 

リスト状態(Lv.1):お話の中から主要なキーワードを聞き取り、箇条書きにする。

マークアップ(Lv.2):箇条書きにしたものを似ている話題や大事な部分で色分けする。

グルーピング(Lv.3):分類を視覚的に理解できる状態にする。

ストラクチャー(Lv.4):複雑で抽象的な概念を適切なフレームワークを活用してグラフィック化する。

 
これらのステップを意識することで、例えばテレビ番組の内容グラレコで描き出すなど、日常的なトレーニングが可能となります。今回の講座で習ったことをきっかけに、さらなるレベルアップを経て、参加者の一人ひとりがグラフィックレコーダーとして職場やイベントで活躍するようになれば、講座を主催した者のひとりとしてこれほど嬉しいことはありません。参加者のみなさんの今後に大きく期待したいと思います。
 

 
最後に、清水さんと安斎から本日の講座のまとめが話されました。
 

清水「(今日の講座を通して)『みんなの前で描く』ということの入り口に立てたかな、と思います。グラフィックレコーディングは、描いたグラフィックそのものが作品として素敵ということも勿論あるけれど、あくまでミーティングの中で機能してこそ効果を発揮するものだと思っています。実は、どう描くかよりも、どのタイミングで、どういう態度で見せるか…というのことの方が大事。いくら良いものを描いても、見せ方やタイミング、態度がイマイチだと、今ひとつの効果で終わってしまうんですよね。
 
グラフィックレコーディングは、一人のデザイナーが自分のアイデアを展開させるために用いるものでは決してありません。描いたグラフィックレコーディングをもとにして、みんなに考えさせたり、問いかけたり、力を引き出す目的で使われて初めて真価を発揮するものだと思っています。また『多様性』や『共創』といったキーワードを掲げる組織が今後増えていくだろう中で、グラフィックレコーディングが、そうした組織のクリエイティブな活動を支えるものになれたらいいな、と思っています」

安斎「今日は入門講座ということで、おそらく皆さん、『練習すればこれは確実に上手くなるだろうな』という実感をつかめて頂けたのかなと思います。同時に、グラフィックレコーディングの奥深さにも触れて頂けたのではないでしょうか。清水さんとはこれまで何回かお仕事させて頂いたんですけど、清水さんのグラフィックレコーディングは、ファシリテーションとしての機能を本質的に備えているなと感じています。例えば、清水さんが『あえて』描いた内容によって、議論が揺さぶられることがよくあるんですよね。正しく事実が整理されるというよりも、グラレコを通して場に可視化された清水さんの認識が、他の人に対して理解を促したり、新しい視点に気づかせたりする。おそらく清水さん自身もそのためのメディアとして、グラフィックレコーディングを使っているのだろうな、と常々感じます。ありがとうございました」

 
 
 

○幕間:グラフィックレコーディングを用いた新たな試み

会場の後ろでは、ミミクリデザインの田中真里奈によるグラフィックレコーディング行われていました。また今回の講座では、清水さんの提案で「グラフィックレコーディングを用いて、プロセスだけでなく、参加者の思考をも可視化してみよう」という試みを行いました。清水さんが普段の案件でも活用している「わかった!」「語り合いたい!」「もっとくわしく知りたい。」という3つのリアクションシールを使って、休憩の時間を使って、参加者一人ひとりに、自分が気になってるポイントに対して、リアクションシールを貼ってもらいました。その結果、どのポイントが多くの参加者にとって強く納得してもらえたり、逆にモヤモヤとして残っているのかが、如実に目で見て把握できるようになっていました。



また、「グラフィックレコーディングについてもっと深く知りたい!」という方は、今回のゲスト・清水淳子さんによるこちらの著作をぜひご一読ください。

「Grapic Recorder-議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書」

PICKUP